10月1日の団員便りで宣言したとおり、団員便り特別篇が始まります!
団員便り特別篇では、天翔楽団第13回定期演奏会で演奏される曲をより楽しむために、曲の説明や、曲のどんなところに注目すればよいのかを解説していきます。
団員便り特別篇、最初の曲は【杵舞石音】です。そして、第13回定期演奏会の1曲目も【杵舞石音】です。

【杵舞石音】は馬聖龍作曲【台湾組曲】の第二曲です。【台湾組曲】は【古老的歌】【杵舞石音】【檳榔樹下】【慶豐年祭】の四曲で構成される組曲ですが、この【杵舞石音】を除いた他の三曲はなぜか不人気で、あまり演奏されることはありません。天翔楽団も前例(?)にのっとって【杵舞石音】のみ演奏します。
【台湾組曲】は台湾の高山に住む台湾原住民の生活を描いた曲です。【杵舞石音】は台湾原住民のうち、何かとよく耳にする阿美族を題材にしています。
阿美族伝統歌謡に『杵舞』というものがあり、二胡の曲で有名な【阿美族舞曲】はこの『杵舞』をモチーフにしています。そして【杵舞石音】も同じく『杵舞』をモチーフにした曲です。そのため、【杵舞石音】でも【阿美族舞曲】のあの旋律が出てきます。聞いてみてください。(いきなり始まるので音量注意)

ところで、『杵舞』って何かご存じですか?名前からして『杵(きね)を持って踊る踊り』ってのは想像つくのではないでしょうか。ここで『杵舞』を見てみましょう。(いきなり始まるので音量注意)

どうでしょう。杵を持ってコンコンカンコンやっていますね。【杵舞石音】ではこの『杵舞』を曲の中に取り入れています。しかしながら、楽団の中に杵を持ちこんで舞台をコンコンカンコンやると、舞台がボコボコになって修理代を弁償させられた上で出入禁止になってしまうので、杵の代わりに竹を叩いてその音を出しています。
【杵舞石音】の楽譜には、打楽器のひとつとして『竹板』と『竹筒』が書かれています。初めて見ると「そんな楽器があるのか!」と驚くのですが、実はこれ楽器でもなんでもなくて、作曲家が「竹の板と竹の筒を用意して、それを叩いてね」と演奏指示を出しているのです。

杵舞石音の作曲家手書き譜面より
杵舞石音の作曲家手書き譜面より

この『竹板』と『竹筒』は最初から最後までずっと出てきます。打楽器は楽団の最後列にいるので、竹を叩いている人を探してみてください。

打楽器でもうひとつ。この曲では『木琴』が出てきます。さっきの『竹板』と『竹筒』は伴奏の役割を担っていますが、主旋律にも打楽器である『木琴』を取り入れて、原住民がその歌謡の中で打楽器を多用していることを表しています。見てみましょう。(いきなり始まるので音量注意)

右の人が叩いているのが『木琴』で、左に『竹筒』もありますね。

【杵舞石音】はただの竹を持ってきて楽器として使っている打楽器と、よく耳にする【阿美族舞曲】の旋律に注目して聞くと、より楽しめる曲になりますよ。そして、原住民らしい力強さ、快活さを前面に推し出している曲です。最後に、この曲を頭から最後まで聞いてみてください。

いかがでしたか。この楽団ではすごい人数で演奏していますが、天翔楽団は20数名のみの楽団。さて、どんな演奏になるのでしょうか。11月15日、ぜひ会場で天翔楽団の熱い演奏を聴いてください。