夫の仕事で、中国の南の島、海南島、海口という町に住んでいた時のことです。

数少ない日本人数人と火鍋、つまり日本でいうしゃぶしゃぶを食べに行った時のことをお話しましょう。

一緒に行ったAさんが「非常に美味しいものがあるから是非食べましょう。」と注文されました。

牛肉、豆腐、野菜、などの材料といっしょにそれも運ばれてきた。楕円のお皿に山になって盛られているそれは、きれいなピンクにほんの少しだけ黒を混ぜたような落着いたピンク色をしていた。直径10chぐらいのドームを少し縦に長くしたアーモンド型で、お皿に鎮座していた。表面はつるっとして、ピンク色の豆腐のように柔らかそうで、プリンプリンして見える。

早速鍋に入れて、みんなで食べてみた。最初は味見のつもりで、ほんのひとかけを箸で切り取ろうとしたが、豆腐のように柔らかいと思っていたのに、意外なことに見た目より弾力があって切りにくい。きっと新鮮なものに違いない。鍋で煮えるのを待って食べてみた。美味だ! 美味しい。今度はもう少し大きい塊を食べた。いやなにおいも何もなく、ねっとりとした濃厚な味が口中にひろがった。  これはどこかで食べた味だ。白子だ。まさに白子の味だ。男性4人、女性2人、誰一人食べられない人はいなかった。特に男性陣はこの“中国の白子”をパクパク食べ、すでにお皿にたくさん載っていた“中国の白子”はきれいに皆さんの胃袋に収まった。もう少し見た目がよければ、私ももっとたくさん食べたんだけれど・・・・。

ピンク色をしたその“中国の白子”の表面にはくっきりとした深い溝が7、8ミリの間隔でぐるぐると刻まれており、いかにもそれらしく見えるのだ。

そう、私たちが学生のころ生物室で見た人間の脳の模型そのもの。“中国の白子”の実態は、何を隠そう『豚の脳みそ』だったのだ。

 

以前中国人の家族と東北地方(遼寧省、吉林省、黒竜江省あたり)の料理を食べに行った時、親指ほどの大きさの巨大カイコのから揚げを食べたことがある。親指の大きさのそれを縦に半分に切り、から揚げにされていたのだが、断面の方から見ると小さな肉詰めピーマンのように見えた。もう片側の表面は黒くてピカっとつやがあり、食べるとパリパリっとした食感になるのではないかと思わせる。ところが、カイコ独特の節(くびれ)がいくつもついていて、これは紛れもなく虫だと感じさせる。何が何でも食べたくない私としては、丁重に固辞したのだけれど、「特に女性には美容にいいから、是非食べなさい」という中国人の勧め上手と全員の注視に抵抗できず、「ええい、食べてやれ!」とやけくそで口にほうり込んだ。

始めは鶏のすり身のような食感でまあまあかなと思った。が、そのとたんグワーっと青臭い味が襲ってきた。まさに青虫の味だ。青虫は食べたことないが、もし食べれば絶対こんな味に違いないと確信させるような、青虫独特のにおいを圧縮して固めて小さなケースに詰め込んだような味だ。小さい時に飼っていたカイコの入っている箱を開けた時のにおいが思わず蘇ってきた。私は何でもなさそうな顔をして、まあまあだとか感想を言いながら、それとなくビールで流し込んだ。だが、口の中からそこはかとなく漂う青虫の味。ウェー気持わる-い! 早く早く、ビールだビール!中国人家族がこっちを見ていない隙に、飲めないビールをゴクン、ゴクン、ゴクン。口の中をアルコール消毒し、やっと落着きを取り戻した。

それに比べたら、見た目は少々怖いけれど、この“中国の白子”のほうがまだましかもしれない。

 

私たちは『インディージョーンズ』に生きたサルの脳みそを食べるシーンがあったとか、『羊たちの沈黙』の次の作品『ハンニバル』には生きている人が脳を切開され、その人の脳みそが他の人にスプーンで食べられているのに、本人は気がつかないで一緒に食べているシーンがあったとか言いながら、“中国の白子”をおいしく味わったのだった。

興味があれば、海南島へ行って、「インディージョーンズ」してみませんか。

 

 

市場ではなく、レストランです。まず食材を選び、

料理法を指示します。

 

上と同じレストランで、客が選択する食材です。

上段左: 空  上段右: ウサギ

下段左:鳩?  下段右:鶏

 

体育館のような市場の建物の前の果物屋さん

台の上の茶色い丸いのは竜眼

お食事中の二人は店の人