大阪では現在2025年に開かれる万国博覧会について何かと話題になっている。前回の万
博はというと、1970年に大阪府吹田市で開かれた大規模な、日本中を圧倒するような巨大
なお祭りにも似た万博を思いだされる方も多いかと思う。日本中、世界中から人が集まり
、今のような情報化時代ではなかったので見るもの、聞くもの全てが珍しく、興味をそそ
られた。
その1970年を境に日本に来る外国人の数も増え、私にも何かできることはないかと考え
るようになり、友達の紹介で日本語を教えるようになった。それが71歳で退職するまでの
40数年間の生活の中で最も重要な活動になった。
現役を退職してからは西宮市国際交流協会でボランテイアとして日本語の個人レッスン
をするようになった。この協会では日本語教育ばかりでなく、外国人が楽しく、孤独にな
らないように様々な活動が行われている。お祭りや食や文化を紹介するイベントの開催、
外国人によるスピーチコンテストなど、活発に活動が行われている。
2021年コロナ禍で非常事態宣言が出され、日本語の授業も休止せざるをえなくなったが
、非常事態宣言が終わってからは授業も再開され、私はバングラデッシュの男の人に教え
ることになった。バングラディシュと言っても子供の時に親と共にニューヨークに渡り、
ニューヨークで育ち教育を受けた人で、幸なことに英語でコミュニケーションができた。
家では日本人の奥さんがおられ、子供たちも日本の学校に通っているという。日本語を勉
強する環境としては問題ないと考えたが、奥さんがとても英語が上手いとのこと。しかし
、日本語を勉強するようになってからは、だいぶ日本語で話すようになったとか。嬉しい
ことだ。この人は非漢字系の学生にもかかわらず漢字に興味を持ち、スマホでよく漢字を
見ながら練習をしていた。しかし、漢字の読み方と書き方がなかなか一致せず、私も困っ
たなと思い、毎回漢字の読み方のテストをやってみた。特に漢字の書き方はスマホで筆順
を見ているだけでは身に付きにくく、学生もそれに気づきノートと鉛筆(シャーペンでは
なく)を持って来るようになった。スマホやタブレットでの学習法には限界があると感じ
ている。ある日、質問があるというので聞いてみると、バイト先で店長に「それ、裏に持
って行っといて」と言われたそうだ。裏は、生地の裏と表、問題用紙の裏と表、葉書きの
裏と表などは説明していたが、建物の表と裏、表通りと裏通り、裏口入学など独特のニュ
アンスまでは説明していなかったなあと、私は反省しきりだった。細かな言葉独特のニュ
アンスを聞くのがとても面白いらしく、私も意味の違いや深い意味合いについて説明がで
きるように心掛けた。これからも日本語に興味を持ち続けて上手になっていってほしい。
先日家の近くでアメリカの星条旗が掲げてあるのを見てびっくりした。日本の中で暮ら
す私たちは世界とは無縁ではなくコンビニへ行ったらたくさんの外国人が、私たち日本人
の生活を支えるために働いてくれている。グローバル化が叫ばれ、SNSでどことでも繋が
れる世界にはなってもやはり身の回りの子供たち、お年寄り、そしてややもすると孤立し
がちな外国人に少しでも思いを寄せられる個人、個人でありたいと思う。