香港文芸坊芸術団初来日公演

~天翔楽団、日本の中国音楽愛好家との共演

内容
日時:2014年7月27日(日) 14時開演

場所:守口市文化センター エナジーホール(京阪「守口市駅」下車3分)

出演者:香港文芸坊芸術団:郭承祖(笙・笛)、郭淑衡(歌)、王静怡(古筝)、彭康泰(笙)、
邵梓煒(揚琴)、王思穎(笛)、洪曉嵐(歌)
天翔楽団、一般公募参加者

曲目:第一部;合奏「将軍令」、合奏「見上げてごらん夜の星を」、笛独奏「小放牛」、笙独奏「小河淌水」、揚琴独奏「旱天雷」、古筝独奏「春澗流泉」、笙独奏「朝元歌」、歌「草原情歌」伴奏:香港文芸坊芸術団・天翔楽団、歌「茉莉花」伴奏:香港文芸坊芸術団・天翔楽団

(休憩)

第二部;古筝独奏「桜花」、笛独奏「陽明春暁」、笙独奏「水庫引来金鳳凰」、笙・筝二重奏「蓮浦謡」、歌「浜辺の歌」伴奏:香港文芸坊芸術団・天翔楽団、歌「川の流れのように」伴奏:香港文芸坊芸術団・天翔楽団、合奏「遠方的客人請你留下来」、合奏「酒歌」

  7月27日(日)14時から、守口市文化センターエナジーホールにおいて、香港文芸坊芸術団初来日コンサートが開催されました。真夏の強い太陽が照りつけるかと思うと急に大雨が降ってくるという不安定な天候のなか、京阪守口市駅のすぐ隣にある会場に350名の方が足を運んでくれました。

今回の演奏会では香港文芸坊芸術団メンバーによる笙、笛、古筝、揚琴の独奏9曲と歌が4曲、それに彼らと天翔楽団、一般公募参加者の3者が合同で2曲を演奏、更に香港文芸坊芸術団メンバーと天翔楽団の合奏が2曲と非常にバラエティあふれた構成で、“香港味”の演奏を十分に楽しんでいただきました。

 香港文芸坊芸術団は2008年4月に創立された団体で、団員は芸術総監督の郭承祖を始めとして専門的に学んだ経験豊富な指導者達です。伝統的な民間音楽を研究するだけでなく、現代中国音楽の探求と開拓に力を注いでおり、また「誰でもが楽しめる音楽」を伝えるため、小・中学生などへの音楽教育をおこなうなど教育にも熱心に取り組んでいます。

天翔楽団にとっても香港の音楽家と交流するのは初めてでしたが、受け入れ準備の過程で、日本でも多くの中国楽器の教室があることや日本人による演奏活動が活発におこなわれている状況を知った香港側から日本人の中国楽器演奏家との交流を行いたいとの希望が出され、一般公募による中国音楽愛好家20名に舞台に上ってもらう交流演奏会としても行うことになったわけです。

 

 


全体合奏

笙独奏:郭承祖                 笛独奏:王思頴

 
そんな経過から生まれた今回の演奏会。前半第1部は香港文芸坊芸術団、天翔楽団、一般公募演奏家の全員が舞台に登場する演奏から始まりました。演奏者49名が舞台に並び、「将軍令」の雄雄しい太鼓の音が会場に響きわたります。この「将軍令」は古典的楽曲ですが、清末に実在した武術家・黄飛鴻をモデルにした香港映画でジェット・リーが主演した「ワンス・アポン・ア・タイム」ではこの旋律をもとに主題歌が作られ、ジャッキー・チェンが歌っています。

同じメンバーが続いて演奏した「見上げてごらん夜の星を」はご存知、作詞・永六輔、作曲・いずみたく、歌・坂本九で大ヒットした日本の名曲です。香港と日本の名曲を香港と日本の演奏家が演奏するという、まさに交流演奏会ならではの選曲です。

 


笙独奏:彭康泰

揚琴独奏:邵梓煒


そして笛独奏「小放牛」から香港文芸坊芸術団の演奏が始まりました。笙、揚琴、古筝と続く独奏曲の音色が会場に響き渡ります。

これらの楽器の中でも笙はなかなか日本でも聴く機会が少ないものです。香港文芸坊芸術団総監督である郭承祖は、香港演芸学院で笙を専攻し、学生時代から海外との文化交流を進めてきました。第1部で彼が演奏した「朝元歌」は原曲が昆曲で、古代の女性が封建的道徳の束縛を打ち破って愛と自由を求める心情を表した曲です。郭承祖の笙はそんな女性の情愛を細やかな風格を生かした演奏で観客を魅了しました。

また同じく笙奏者の彭康泰は第2部で「水庫引来金鳳凰」を演奏しました。水庫とはダムの事で、金鳳凰は素晴らしい事物を比喩した言葉です。山間部にダムが建設され灌漑による豊かな実りに人々は歓喜します。笙はダムの水流の壮観さや鳳凰が舞う様子を笙独特の演奏技法とリズムの変化で表現します。

そんな笙の演奏や各楽器の独奏に会場からは大きな拍手が送られました。

今回の演奏会では楽器の演奏だけでなく、歌も組み入れられました。歌手の郭淑衡は日本の観客に敬意を表すため、第2部の「浜辺の歌」と「川の流れのように」の2曲を日本語で歌い上げました。正確な日本語と堂々たる声量は曲そのものの素晴らしさとあいまって、強い印象を観客に与えました。

 


歌:郭淑衡


 そして演奏会の最後は香港文芸坊芸術団と天翔楽団の合奏です。合奏の2曲に互いの楽団への友好の気持と会場に来られた人々への感謝を込めての演奏でした。

「遠方的客人請你留下来」は遠方からのお客さんを迎えて心からの接待をする曲です。そして最後の曲「酒歌」では、人々がお酒を飲み舞い歌う情景が情熱的な旋律に載せて奏でられます。舞台演奏者と観客の心情がまさに一体となった演奏会は大きな拍手を受けて幕を閉じました。

天翔楽団もその準備と演奏、更にスタッフとしての作業に関わるなど団員はあらゆる場面で活動しました。香港との交流はまた天翔楽団の新生面を示すものになったかも知れません。