前々回(2020年7月)は「七夕」、前回(2021年8月)は「京都・五山の送り火」というように、過去2回は自分の団員便りが掲載される「月(month)」に関わるモノを題材にしてきました。そこで「今回も」と思ったのですが、「10月」に関わる良い題材が見つからなかったので、少し範囲を広げて「10」に関わるモノということで、十円硬貨の図柄として有名な宇治の「平等院鳳凰堂」について書くことにしました。

9月某日、京都市内の自宅から電車に乗って約40分でJR宇治駅に到着。そこから10分ほど歩いたところに、平等院があります。鳳凰堂を実際に見て思った感想は、「とても美しい佇まいだなぁ」と。十円硬貨の中の無機質かつ無色の図柄とは異なり、実物は朱色の柱梁と鈍(にび)色の屋根を有し、しかもその姿が同時に、周りを囲む池の水面(みなも)にも鮮やかに映り込んでいたのが、とても印象的でした。

鳳凰堂を一周し、ついでに敷地内にある2か所の賽銭箱にそれぞれ十円硬貨を入れてお辞儀した後、併設されている「鳳翔館」というミュージアム(館内撮影禁止)の中に入りました。

展示物の中には「雲中供養菩薩像26躯」という国宝もあり、中国民族楽器の琵琶、古箏、笛子、笙、鈸などを奏でる菩薩像もいました。

https://museumforum.pref.kyoto.lg.jp/museum-map/byodoin-museum-hoshokan/

そして参観コースの終わりのほうには、なぜか一万円紙幣の展示が・・・。説明文を読むと、現在使用されている一万円紙幣(E号券、2004年11月1日発行開始)の裏面には、鳳凰堂の屋根の上の「鳳凰像」が描かれているとのこと。展示されていた紙幣の通し番号は「A000003A(寄贈)」でした。ちなみにA000001A券は日本銀行貨幣博物館に、A000002A券は慶應義塾にあるそうです。

https://www3.boj.or.jp/kofu/1000smartphone/1153sinken.html

今回、私が平等院を訪れた元々の理由は、「鳳凰堂が十円硬貨の絵柄に採用されているから」だったのですが、まさか一万円紙幣にも描かれていたとは知りませんでした。日本国内に数多(あまた)ある神社仏閣の中で、鳳凰堂だけが、しかも2種類の通貨に採用されているなんて、「あっぱれ、鳳凰堂」って感じです。

余談になりますが、少し前にテレビでよく見かけた某不動産会社のCMの中で、「1円玉を作るのに3円かかるって知ってる?」というやり取りがありました。「それならば、10円玉はいくらかかるのだろう?」ということが気になったので調べたところ、以下のホームページに、硬貨1枚当たりの製造コストと原料価格(金属の価格は2018年当時)が掲載されていました。

https://magazine.tr.mufg.jp/90130

そこで、そちらのデータを参考にして下表を作成しました。ご覧の通り、「10円玉を一つ作るには約13円かかる」というのが答えになります。なお、製造コストが額面以上の硬貨(1、5、10円玉)であっても、額面当たりの製造原価(金属の材料費)はいずれも1.00未満なので、硬貨を熔かして売ったとしても、損をするだけなのですね