天翔楽団の練習風景は、台湾その他海外からのお客さんをびっくりさせることがあります。
それは、全員が真面目に指揮者の話を聞いているということ。実はこれ、中国音楽の本場のアマチュア楽団ではなかなか見られない光景です。

天翔楽団の練習では、指揮者の井上先生にはおよそ2週間に1度の頻度で指導に来て頂いています。楽団練習は毎週ありますから、天翔楽団の練習の半分は指導者のいない練習ということになります。つまり、指導者がいる練習は非常に貴重な時間なのです。

天翔楽団の練習風景

井上先生がいる練習では、先生が話している間は誰一人楽器の音を出さず、じっと話を聞いています。そして、演奏の途中でも先生が指揮を止めると、パッと演奏が止みます。

ここまで読んで「あたりまえじゃないの?」と思った方に、台湾のアマチュア楽団の練習風景をお伝えしましょう。

まず、普段練習に来るのは全団員の四分の一程度です。団員全員が集まるのは演奏会の一週間前からです。
次に、楽団練習の開始時間が19時だとします。すると、皆が集まるのは19時ジャストです。もちろんそこから椅子並べやチューニングが始まるので、実際に練習に入るのは19時15分頃になります。

練習が始まってからの各パートの特徴は以下のとおりです。
擦弦パート-指揮者がしゃべっている間もおかまいなしに、十六分音符の練習をしています。常に半数以上が音を出しており、楽団の中で一番うるさいパートです。
弾撥パート-指揮者がしゃべっている間もおかまいなしに、左手のみで練習をしています。弾撥楽器の場合、左手で弦を押さえるだけでも音が出るので、常に小さな音が出続けています。
笛パート-ずっと笛膜を調整しています。指揮者が演奏を始めようとしても笛膜の調子が良くなるまで吹いてくれません。ちょっと吹いたと思ったら「笛膜の調子がおかしい」と言い訳を始めます。
嗩吶パート-一曲の中で出番が非常に少ないので、常に暇そうにしています。60小節休んだりすることがザラなので、本を持ってきて読んだりします。でも、楽器に臭いが付くのが嫌なので物を食べることはあまりありません。
打楽器パート-一番自由なパートです。大型楽器に隠れて昼寝をしたり、ご飯を食べたり、本を読んだり、何でもアリです。いざ打楽器が出てくるとこにきても気付かないことが多いです。

以上の内容を見ると、一見不真面目そうな感じがしますが、台湾ではアマチュア楽団と言えどもそれぞれの実力は非常に高いので、本番の直前一週間くらいになると本気を出し始め、本番ではすばらしい演奏をします。

台湾からのお客さんが来るたびに「天翔は真面目すぎる」との意見を貰います。楽団練習風景にも、民族性の違いが出ているのです。

真面目な日本人の姿に血が騒ぎ熱血指導を始める台湾からのお客さん(一番右)
真面目な日本人の姿に血が騒ぎ熱血指導を始める台湾からのお客さん(一番右)